ジャン=バティスト・エミール・ドロプシ作 無原罪の御宿り 蛇を踏み付ける勝利の聖母 ブロンズ製メダイユ
直径 59.7 mm 厚さ 最大 5.2 mm 重量 81.6 g
フランス 20世紀初頭頃
19世紀後半から20世紀前半のフランス・メダイユ彫刻を代表する彫刻家のひとり、エミール・ドロプシ (Jean-Baptiste Émile
Dropsy, 1848 - 1923) による青銅(ブロンズ)製円形メダイユ。無原罪の御宿りなる聖母は球体上に蛇を踏みつけて立ち、両腕を少し広げて斜め下に伸ばしています。掌は前に向けられて見る者を招き、両手からは恩寵の光が発出しています。メダイユの下端に、エミール・ドロプシのサイン
(E. Dropsy) が刻まれています。
エミール・ドロプシは「無原罪の御宿り」をキリスト教図像学の伝統に従った姿勢で表現していますが、作品の細部には独自性があります。よく知られている「不思議のメダイ」の場合、恩寵の光は聖母の指先から発しています。しかるにエミール・ドロプシはこの作品において、聖母を通して与えられる神の恩寵を聖母の掌(てのひら)の中心から発出させており、その様子はキリストの受難の傷を思い起こさせます。
聖母は十字架の下にたたずみ、キリストとともに苦しみ給うたゆえに、クロスの裏側に聖母の姿を重ねたクルシフィクスが作られることがあります。このメダイが蛇を踏み付ける「勝利の聖母」を表していながら、マリアの顔に悲しみが宿っているように見えるのは、このマリアが「無原罪の御宿り」、「勝利の聖母」としてのみならず、「マーテル・ドローローサ」をも重ね合わせた聖母像として表現されているゆえではないでしょうか。
またドロプシの聖母は伏し目がちで、その視線は蛇に向けられています。「創世記」3章において、エヴァを騙した蛇すなわち悪魔は神に呪われていますが、神の慈愛は無辺であるゆえに、もしも罪を悔い改めるならば、悪魔さえも赦し祝福し給うはずです。しかるに実際にそうなっていないのは、罪を犯す者自身が、頑(かたく)なに救いを拒むからです。ドロプシの聖母が蛇に勝利しながらも、その表情に晴れやかさが無く、却って悲しみの眼差しを蛇に向けているのは、救いを拒む者を憐れんでいるのです。
このメダイユは片面です。またメダイユの縁にはコルヌ・コーピアエ(CORNU COPIAE 豊穣の角)、及び「ブロンズ」(BRONZE) の文字が刻印されています。
エミール・ドロプシは本品以外にも聖母マリアをテーマに美しい作品群を制作しています。それらの作品は、例外なく、美しく優雅な女性美が深い精神性と融合し、静謐な美しさが溢れるメダイユに仕上がっています。
【下・参考画像】 エミール・ドロプシの作品 いずれも当店の商品です。
エミール・ドロプシ作 打ち出し細工による金色の枠のオラトワール 童貞マリア
エミール・ドロプシ作 打ち出し細工によるアール・ヌーヴォーのオラトワール 白百合の童貞マリア
エミール・ドロプシ作 「童貞マリア」 打ち出しのメダイを木製台座に嵌めた自立式オラトワール 8 x 8
cm
本品はおよそ6センチメートルの直径、80グラムを超える重量があるたいへん立派な作品です。保存状態も良好で、特筆すべき問題は何もありません。ご希望により、額装も可能です。
本体価格 52,000円 (額装別)
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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